二人がここにいる不思議

「春の夜の散歩というのに憧れていてね。

そら、朝まで温度が下がらない、暖かい夜があるだろう。

歩くんだ。女の子といっしょに。

一時間ほど歩くうちに、

まわりの物音や景色から切り離されたような場所に着く。

丘を登って腰を下ろす。

星を見上げる。

彼女と手をつないでいたいな。


草の香りがして、

まわりの畑からはすくすく伸びる小麦がにおって、

自分が土地のまん中にいる、

アメリカという国の中心にいるのを感じるんだ。



まわり中に町があり、

離れたところにはハイウェイも走っているけれど、

誰もぼくらのことは知らない。


ぼくらがその丘のてっぺんにいて、

草むらに寝て、

夜の景色を見ていることを。



彼女とは手をにぎっているだけでいい。


これ、わかるかなあ。


手を取り合っているだけで満足なんてことがあると思うかい? 



動きはなくても心は伝わる、そういうことさ。


その夜いろんなことが起っても、

こういうことが一生記憶に残るんだ。

手をとりあうことが、それ以上 の意味を持つ。


ぼくは信じるよ。

あらゆることが幾度も起って、

終って、

驚きがなくなったとき、

最初に何が起ったかが重要になる」



レイ・ブラッドベリ『二人がここにいる不思議』より―


新潮社―立ち読み ↓ 「二人がここにいる不思議」
http://www.shinchosha.co.jp/books/html/221105.html





『 動きはなくても心は伝わる、そういうことさ。 』





太陽が温かく微笑む日は

お月さまがやさしく輝く



宇宙の二つの不思議に包まれて

こうしていることも不思議


花が笑うように咲き

鳥の表情にもやさしさを感じる




「動きはなくても心は伝わる、そういうことさ。」





あなたにとっての

「忘れられない夜」を

思い出したり

想像しながら




おやすみなさい


(^―^)

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