通りすがりの誰かさん


フランシスコという男が

レキマーという果物を食べながら

もの凄い勢いで追いかけてくる。




私の目の前を

通りすがりの人が

顔を赤く染めて

足早に立ち去ろうとしていたので


名前を尋ねると

「秋です」

と答えた。




君はいつだって

そっと来て

そっと去ってしまう。




夏や冬は

強く感じることができるのに



秋は、

どこか注意深くしていないと



いつの間にか来て

いつの間にか去ってしまう




真っ白な世界が広がる前に

こんなにも

色づいているのに





台風27号の「フランシスコ」は、男性の名前。

台風28号の「レキマー」は、果物の名前だそうだ。



男が果物を食べながら

嵐となってやって来る。


「藤原の効果」は如何に。




通りすがりの「秋」に

「もう少しそばにいてください」

とお願いしたものの




「次は

ツルが女を連れてくるまで

考えておくよ・・・」


・・・だって。



通りすがりの秋は

いつだって

切なくて

ツレナイ。




色づいた心が

凍りつく前に

そっと秋色を

心の中に残す



残り香は

どこか苦いフルーツの香りがする







『通りすがりの秋』



「草に臥て 青空見れば 天と地と 我との他に何もなし」

―気象学者・理学博士 藤原咲平






おやすみなさい


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