一夜物語―「哀しみを食べる女」

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ある夜、男がベッドの上で休んでいると

「今夜もたくさん食べて満足だわ。」と

窓の外から女の声が聴こえてきた。



こんな夜更けに

どんなご馳走を食べたのだろう・・・

男が窓を開けようとすると

「ダメ、開けないで。」と声がした。



まんまるお顔を見られたくないのかと

おかしくなり男はクスッと笑った。




何か食べ物をわけてあげようかと男が

ゴソゴソと探していると

「あら、私は人間の哀しみを食べているのよ。」と女が言う。

「それなら僕の哀しみも食べてくれるのかい?」と男が訪ねると、

女は迷惑そうどころか、むしろ上機嫌になって

「もちろんよ!」と嬉しそうに答えた。



男はからかわれているのだろうと思ったが

女の言いなりになり眼を閉じてじっとしていると

もやもやと霧のようなものがたちこめて

不思議とどんどん身体が軽くなっていく






男は奇妙なことがあるものだと、

そお〜っと、窓を開けてみた・・・




窓の外には誰もいない。



そこには

しずしずと空の向こうへ帰ってゆく

まんまるお月さまがいるだけだった。




織姫と彦星だって

一年に一度出逢えるのに、


月と太陽はすれ違ってばかり。



ようやく今宵(4/4)は

あなたと出逢える日だもの




せっせと人間に幸せをまく

あたたかい太陽に喜んでもらえるように



月のわたしは

せっせと人間の哀しみを食べ

まるくまるく輝くの


人間の哀しみを食べ

まるくまるく輝くの・・・



去りゆく月が

少し哀しげな唄をつぶやくように

空の向こうへと消えていった



男はそのまま眠りにつき

窓から差し込んだ早朝の太陽に起こされた



昨夜のあの「人間の哀しみを食べる女」は、

夢だったのだろう





続きは夢の中で・・・(二度寝かい!)


おやすみなさい





(^―^)

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ひとりごと

2015年4月4日は皆既月食

12分間の

月と太陽の出逢いが叶いますように・・・




富士山の頂上はまだ冬の装い

凍りついた雪をやさしく溶かすように

桜がやさしく咲いていた


富士山の装いを見た桜が

「もう春よ、お目覚め」と

寝ぼけた富士山を起こしていた








あなたが眠っている間に

あなたの哀しみを

月がせっせと食べているに違いない。


きっと。



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通り過ぎた春


遅咲きの桜の中のお月さま




飛べ! 飛べ! 飛べる!



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